私たちの生活に深く根付いているカフェイン。朝の目覚めに飲むコーヒーや、集中力を高めるためのエナジードリンクなど、多くの人が日常的に取り入れています。しかし、その覚醒作用や集中力アップの効果に頼る一方で、正しい知識がないと、睡眠の質を低下させたり、かえってパフォーマンスを落とす原因にもなりかねません。本記事では、カフェインの基本的な作用から、摂取する際の注意点、さらには日々の作業効率を向上させるための賢い使い方までをわかりやすく解説します。忙しい毎日をより快適にするためのヒントをぜひ見つけてください。
目次
カフェインとは
覚醒作用
古来よりカフェインは覚醒作用のある物質として知られてきました。カルディ伝説をご存知でしょうか。カルディとはエチオピアの羊飼いの名前であり、ある日彼は藪に生えている赤い実を食べた羊が活発に飛び跳ねているのを見ました。自身もその実を食べたところ活気が湧き、陽気な気分になったと伝えられています。これはいわゆるカフェインの覚醒作用であり、古来からその効果については知られていました。ちなみにお店のカルディはこの伝説から引用した名前です。このカフェインの覚醒作用を用いて作業効率化を図ることは有用であり、エナジードリンクの主な摂取目的もこのカフェインの覚醒作用を利用するためであることがほとんどです。そんなカフェインですが、摂取方法を間違えると夜間の睡眠に悪影響を及ぼし、むしろ仕事効率が低下してしまう恐れがあります。
補足:カルディ伝説

お店のカルディのイラストには、中心に赤い実を食べている羊が、右には杖を持っている羊飼いのカルディが、左下にはコーヒーが書かれており、カルディ伝説を一枚の絵に表したものとなっています。
睡眠への影響
カフェインの影響が残った状態で睡眠をとると、もちろん睡眠の質は低下します。恐ろしいのは、その睡眠の質の低下は自覚できないこともあることです。自分では熟睡できたと感じていても、カフェインにより睡眠の質が低下していることがあり得ます。それ以外にもむずむず脚症候群や歯ぎしりなどを悪化させるリスクもあります。
そんなカフェインをうまく使うために必要な情報を次項で説明します。
カフェインの基礎知識
作用機序と半減期
人間は活動することによってATP(アデノシン三リン酸)を消費し、消費されたATPは最終的にアデノシンという物質になります。このアデノシンは睡眠作用を誘発します。つまり運動したり、たくさん頭を使ったりしてATPを消費するとたくさんのアデノシンが産生され、それによって眠くなるのです。逆に日中活動せず、ぼーっと過ごしているとアデノシンは産生されず、夜あまり眠れなくなってしまうというわけです。このアデノシンの効果を阻害するのがカフェインの作用です。つまりアデノシンを阻害することで睡眠作用の誘発を抑える(=覚醒させる)のです。
カフェインの半減期は3-7時間と言われています。半減期とは体内で量が半分になる時間のことです。例えば半減期を中間の5時間とすると、100mg摂取した場合、5時間後に50mgに、さらにその5時間後に25mgになるといった具合です。
飲料中のカフェイン量
様々な飲料にカフェインは含まれていますが、具体的にどのくらい含まれているのでしょうか。

意外なことにジャスミン茶にも含まれているのです。
具体的なカフェインの摂り方
1日400mgまで
夕方以降に100mg以上のカフェインを摂取すると睡眠障害が発生すると言われています。ここでカフェインの半減期を中間値の5時間と仮定すると、18:00に100mg以上のカフェインが残るとき、13:00に200mg、8:00に400mg以上摂取した場合となります。つまり朝起きてすぐカフェインを400mg摂取しても睡眠に悪影響が出てしまう可能性があります。400mgとはタリーズの缶コーヒーの大小(390mlと285ml)それぞれ飲んだものに相当する量です。意外とすぐに達してしまうので注意が必要です。

ここで問題なのは、熟睡感に問題がなかったとしても、実は睡眠の質は下がっており、知らず知らずのうちに日中のパフォーマンスが落ちてしまっていることです。そして日中の眠気を無くすためにさらにカフェインを摂取し、睡眠の質が低下し、という悪循環に実は陥っているかもしれません。
夕方以降は控える
先ほどの理論と同じく、夕方以降に摂取したカフェインは代謝に時間を要するため、夜間の睡眠に悪影響を与えます。そのため、夕方以降はカフェインを控えるべきであるとされています。この際に注意したいのは、知らず知らずのうちにカフェインを摂取していることです。コーヒーやエナジードリンクにカフェインが含まれているのは想像できますが、意外にもジャスミン茶などにもカフェインが含まれています。夕方以降は摂取するものに注意し、知らぬ間にカフェインを摂取しないことが重要です。
power napと合わせる
power napとは、とっても有効な昼寝の方法です。20-30分程度の仮眠で眠気がなくなり、スッキリします。人間のサーカディアンリズム的に午後2-3時は眠気が生じやすいが、このタイミングでpower napを行うと眠気がなくなり、作業により集中することができます。20-30分という時間がとても重要ですが、その理由を説明します。
人間の睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠に分けられます。そしてノンレム睡眠は眠りの深さからN1、N2、N3と分けられます(N1<N2<N3の順に深睡眠となります)。

入眠するとレム睡眠を通り越してノンレム睡眠から始まります。N1はいわゆるうたた寝状態であり、その後N2、N3と進行していきます。仮眠で重要なのはN2までに止めることです。N1までの状態では熟睡感は得られにくく、N3まで進むと睡眠慣性と言って寝起きの悪さが残ってしまいます。すなわちN2の状態で目を覚ませば、熟睡感も得られ、起きた時に眠気を引きずることもありません。そのN2の状態がおよそ20-30分なのです。これを利用したのがpower napです。
これに加えて、カフェインの覚醒作用を利用してpower napの効果をさらに増強します。カフェインの覚醒作用発現は摂取後からおよそ30分程度と言われています。これは摂取してから吸収され、血液に乗って脳に到達し、アデノシン受容体を阻害するまでの時間です。つまり摂取後から30分程度は前述したような睡眠障害は起こりません。power nap開始直前にカフェインを摂取することで、起床時にちょうどカフェインの覚醒作用が働いて、さらに頭がスッキリするのです。
この20-30分をあえて費やすことで作業効率はそれ以上に向上するので、ぜひ試してみてください。
まとめ
以上が上手なカフェインとの付き合い方です。今の時代、どこにでもコーヒーショップがあり、どこでもエナジードリンクが買えてしまいます。実はカフェインによって睡眠の質を低下させている人はたくさんいるのではないかと考えられます。知らずのうちに日々のパフォーマンスを低下させている可能性があります。しかし、上手に使えば日々の生産性がグッと向上するものであり、適切な知識を身につけてもらいたいと思います。