交替勤務における睡眠のポイントと対策

交替勤務のある生活では、睡眠の質とタイミングが重要です。特に夜勤を含むスケジュールでは、体内時計(サーカディアンリズム)に大きな影響を与えるため、適切な対策が必要です。この記事では、交替勤務の睡眠における基本的な考え方と具体的な対策について詳しく解説します。

交替勤務で健康的に働くためには、まず睡眠と体内時計の関係を理解することが大切です。その上で、以下の三つの原則を守ることが重要です。

体内時計はずらさない

私たちの体内時計は約24時間(正確にはもう少し長めの場合が多いです)の周期で動いています。この体内時計に従って睡眠をとることが自然であり、それに反した睡眠は非常に難しくなります。交替勤務の対策の一つとして体内時計をずらそうとするものがあります。体内時計は光や睡眠薬を活用して動かすことは可能ですが、そのズレは数分から数時間程度にとどまり、大きく調整することは困難です。特に体内時計を頻繁に変更してしまうと、夜勤以外の日の睡眠にも悪影響を及ぼします。そのため、「体内時計を無理にずらさない」という基本方針を守りながら、眠気や疲労に対処するのが賢明です。

夜勤の眠気はスポットで対策する

体内時計を維持しながら夜勤を乗り切るためには、適切なタイミングで適切な長さの仮眠をとったり、上手にカフェインをとったりすることで眠気を一時的に抑えることが有効です。

夜勤明けの過ごし方で整える

夜勤明けは、日常のリズムに戻るための重要な時間です。なるべく普段の生活リズムに近い形で過ごすよう心がけましょう。午前中には日光を浴び、日中は普段通り活動することが推奨されます。また、適度な仮眠を取りつつも早めに本睡眠に入ることが、睡眠の質を高めるポイントです。

以上の三つの原則を守りつつ、具体的にどうすれば良いかを以下で解説します。

夜勤中・夜勤前の仮眠を活用する

眠気対策として「パワーナップ」が効果的です。パワーナップとは、20〜30分間の短い仮眠のことで、眠気を和らげると同時に、仮眠後に起こるぼーっとした状態(睡眠慣性)を防ぎます。これは、ノンレム睡眠のN2で覚醒を促すことと同義です。また、仮眠前にカフェインを摂取すると、睡眠慣性をさらに生じにくくさせることができます。カフェインの効果発現には30分程度要するため、パワーナップ直前にカフェインを摂取することで、覚醒効果が仮眠後に現れやすくなるためです。

補足:レム睡眠、ノンレム睡眠について

引用:https://www.ssp.co.jp/drewell/sleep/type.html

睡眠には大きく分けてレム睡眠、ノンレム睡眠があります。レム睡眠は浅い眠りで、脳が活発に活動しており夢をみるのもレム睡眠中です。一方、ノンレム睡眠はレム睡眠よりも深い睡眠で、N1、N2、N3の3段階に分かれ、段階が進むほど深い眠りに入ります。ノンレム睡眠中は脳の活動も抑えられ、身体の修復や成長ホルモンの分泌などが行われ、体の回復に重要な役割を果たします。

20~30分のパワーナップでは、主にN2の浅いノンレム睡眠まで到達すると考えられています。このタイミングで目覚めると、比較的スッキリとした覚醒感を得ることができます。一方、N1の段階で目覚めると睡眠が浅すぎて熟睡感を得られず、N3の深い睡眠に入ると、目覚めたときに睡眠慣性が生じるため、昼寝としては不適切とされています。そのため、昼寝の時間は20~30分が最適とされており、パフォーマンス向上や疲労回復に効果的です。

夜勤中のカフェイン摂取

カフェインの覚醒効果は、夜勤中の眠気対策に役立ちます。しかし、飲み過ぎには注意が必要です。カフェインの半減期(体内の濃度が半減するのに要する時間)は3-7時間であるため、本睡眠の7時間前には摂取を控えましょう。また、1日の上限量は成人で400mg程度(コーヒー3~4杯)を目安にすると良いでしょう。

夜勤中は強い照明を避ける

強い照明は体内時計に影響を与えるため、可能であれば避けるようにしましょう。作業環境によっては完全に避けるのが難しい場合もありますが、サングラスを使用するなどして調整を試みることができます。

夜勤明けの午前中は日光を浴びる

体内時計をずらさないために、夜勤明けの午前中には日光を浴びましょう。眠気があってもサングラスなどで遮光せず、積極的に外に出てみてください。

夜勤明けの仮眠は午前中に済ませる

眠気が強い場合は午前中に短時間の仮眠をとりましょう。ただし、午後以降の仮眠は本睡眠に悪影響を及ぼす可能性があるため避けるのが賢明です。

夜勤明けの本睡眠は早めにとる

夜勤明けの夜は早めに就寝し、翌日は通常の起床時間に合わせるよう調整しましょう。その際、寝室の環境を整えることが重要です。遮光カーテンや耳栓を使用したり、スマホの通知をオフにするなど、快適な睡眠環境を作りましょう。場合によっては、医師の指導のもと睡眠薬を一時的に活用することも選択肢となります。

交替勤務における睡眠のポイントは、「体内時計を守りながら、眠気をうまくコントロールすること」です。適切な仮眠やカフェインの活用、夜勤明けの過ごし方を工夫することで、睡眠の質を保ちながら健康的に働くことが可能です。ぜひこの記事で紹介した対策を取り入れ、無理のない形で交替勤務を乗り越えましょう。

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